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山口地方裁判所 昭和42年(ワ)38号 判決

原告

板村弥恵子

ほか三名

被告

有限会社小橋製材所

ほか二名

主文

被告らは、各自原告板村弥恵子に対し金六七万四一一六円、原告板村裕子、同板村恵美子、同板村和子に対し各金三五万八四四〇円、および右各金員に対する昭和四二年三月一五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。

この判決は、原告らの勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

原告ら訴訟代理人は、「被告らは、各自原告板村弥恵子に対し金九二万円、原告板村裕子、同板村恵美子、同板村和子に対し、各金五〇万円、および右各金員に対する昭和四二年三月一五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの連帯負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、

「一、原告板村弥恵子は、訴外亡板村龍一の妻であり、その余の原告らは、いずれも同人の子である。

二、右龍一は、昭和四一年四月一二日午後三時四〇分ごろ、防府市大字仁井令字柳原二光重車両整備工場附近国道二号線左側を自転車に乗つて東進中、後方から進行して来た被告横路の運転する大型貨物自動車(岡一せ二七六九号)と衝突して転倒し、脳挫傷等の重傷を負い、同月二四日午後一一時一〇分、同市所在の山口県立中央病院において死亡した。

三、被告横路は、右自動車を運転し時速約五〇粁で東進中、約五〇米前方の右国道の左側非舗装部分を自転車で進行する右龍一を認め、その右側を追抜こうとしたが、そのまま直進した場合は右龍一との間隔がわずか二〇糎位となる状況にあつたから、このような場合、自動車運転者としては、前方の自転車の動静に注意し、且つ右側を安全に通過できるよう十分な間隔をとり、徐行して進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然同一速度のまま直進した過失により、自車のスピードと振動によりふらついた右龍一の右肩附近に、自車左側のバツクミラーを衝突させて右事故を惹起させたものである。よつて、同被告は、不法行為者として、右事故によつて発生した損害を賠償すべき義務がある。

四、被告河部は、運送業を営み、被告横路を雇用するものであるが、被告会社から前記自動車による岡山県津山市から福岡県甘木市までの長距離輸送を請負い、被告横路をして右自動車を運転させていたところ、前記事故を惹起したものである。よつて、被告河部は、自己のために右自動車を運行の用に供していたものであるから、右事故によつて発生した損害を賠償すべき義務がある。

五、被告会社は、製材業等を営み、被告横路を雇用し、前記自動車を所有するものであるが、右自動車に自己の木材を積載して、前記のとおり河部に長距離輸送を請負わせ、被告横路をして右自動車を運転させていたところ、前記事故を惹起したものである。よつて、被告会社は、自己のために右自動車を運行の用に供していたものであるから、右事故によつて発生した損害を賠償すべき義務がある。

六、ところで、前記事故による原告らの損害は次のとおりである。

(一) 原告弥恵子は、右事故によつて、左記(1)および(2)の合計金七万〇五七二円の支出を余儀なくされたから、これは同原告の損害である。

(1) 前記龍一の死亡までの費用

イ 処置、手術料(前記病院) 金四五九〇円

(但し、総額三六万九〇七二円の内金)

ロ 附添人費 金一万三〇〇〇円

(2) 同人の葬式費用

イ 葬祭施設利用費 金一万七九二〇円

ロ 御布施 金九七〇〇円

ハ 飲食費 金一万〇四二二円

ニ 雑費(写真、骨壺、ローソク、御供物等) 金一万一八二〇円

ホ 自動車代 金三一二〇円

(二) 前記龍一は、前記事故当時満五五才(明治四四年四月一三日生)であつたが、極めて健康であり、死亡当時山口県岩国渉外労務管理事務所に勤め、平均月額金四万五〇〇〇円以上の給与を得ていたが、生活費は平均月額金二万円であつたから、右事故がなければ、死亡の日以後も毎月金二万五〇〇〇円以上の純収入を得たはずであり、厚生省発表の第一〇回平均余命表によれば満五五才の男子の平均余命は、一八・五四年であるから、今後少くとも一〇年間は生存して就労し得たはずである。従つて、同人は、右事故によつて、月額金二万五〇〇〇円の一〇年分、合計金三〇〇万円の得べかりし利益を失つたことになり、これからホフマン式計算法によつて年五分の中間利息を控除した金二三八万三四八四円(円未満切捨、以下同じ)がその現在額であるが、これと同額の損害を蒙つたことになる。

そして、原告らは、右龍一の相続人として、右損害賠償請求権を相続したものであるから、それぞれの相続分(原告弥恵子は三分の一、その余の原告ら三名はいずれも九分の二)に従い、原告弥恵子は金七九万四四九四円、その余の原告らは各金五二万九六六三円を承継取得した。

(三) 原告らは、それぞれ夫又は父の不慮の死にあつて悲嘆にくれ、甚大な精神的苦痛を受けたが、これを慰藉するには、原告弥恵子については金四〇万円、その余の原告らについては各金二〇万円が相当である。

七、以上のとおりであるから、原告弥恵子については前項(一)の財産的損害金、(二)の相続債権および(三)の慰藉料の合計金一二六万五〇六六円から、被告会社が原告らに支払つた自動車損害賠償責任保険金一〇一万三八一一円のうち前記割合の相続分に当る金三三万七九三七円を控除した金九二万七一二九円、その余の原告らについては前項(二)の相続債権および(三)の慰藉料の合計金七二万九六六三円から、同様保険金のうち前記割合の相続分に当る金二二万五二九一円を控除した各金五〇万四三七二円が被告らの損害賠償債務の各残額である。

よつて、被告らに対し、原告弥恵子は、右の内金九二万円、その余の原告らは、右の内各金五〇万円、および右各金員に対する訴状送達の日の後である昭和四二年三月一五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

と述べ、被告の抗弁に対し、「否認する。」と述べた。

被告ら訴訟代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、答弁として、

「一、請求原因第一、第二、第四項の事実は認める。

二、同第三項の事実中、被告横路が前記貨物自動車を運転して東進中、前記龍一の右側を追抜こうとしたこと、右龍一が道路の非舗装部分を自転車で進行していたこと、および前記事故を惹起したことは認めるが、その余の事実は否認する。

右事故は次に述べるとおり専ら右龍一の過失によるものであり、被告横路には何ら過失はない。

(一) 右事故現場附近は数粁にわたり幅一六米の直線道路で、そのうち中央の九米が舗装され、両側の三・五米づつは非舗装であり、自動車の交通量の極めて多いところである。

(二) 被告横路は、時速四〇粁(原告らの主張するように五〇粁ではない)で進行していたものであり、その振動によつて、そばを通つている自転車がふらつくというような高速ではなかつた。

(三) 前記龍一は、毎日自転車で右道路を通行しており、現場附近の道路の状況や交通量を経験していたから、自転車で右道路を通行する際は前方、後方および右側方等に注意し、少しでもその進路をかえるときには特に後方に注意しなければならないことは十分知つていたはずである。

(四) 右のように自動車の交通量の多い直線道路を自転車で進行している者が、俄にその進路を変えて右横に出るというようなことはあり得べからざることであり、その右側を追抜こうとする自動車の運転者に対し、このようなことを予測して運転するよう要求することはできない。

(五) 右龍一がふらついて右に寄つたのは、非舗装部分の道路の凹凸或いは石塊のためか、又は当時同人が他のことを考えていて精神的空白があり、後から進行してきた前記自動車の気配に急に動揺したためか、そのいずれかによるものであつて、右自動車のスピードと振動によるものではない。

(六) 被告横路は、自転車との間に二〇糎の間隔をおいて進行していたのであり、同被告には何ら責むべき点がないのに反し、右龍一は、三・五米ある非舗装部分の右端を進行していて、右側に倒れかかるように寄り、右自動車のバツクミラーに衝突したために前記事故が発生したものである。

三、同第五項の事実中、被告会社が製材業を営むものであること、前記自動車に自己の木材を積載して岡山県津山市から福岡県甘木市まで輸送することを被告河部に請負わせたことは認めるが、その余の事実は否認する。被告会社は、被告横路を雇用したこととも、右自動車を所有したこともない。被告会社は、被告河部が右自動車を購入したとき、その代金支払の保証の意味で、買主名義を被告会社とすることを被告河部に許したが、右事故当時すでに右代金は完済されていたのに、自動車の所有名義を同被告に移すことがおくれていたのである。

四、同第六項の事実中、(一)の事実は認め、(二)の事実は不知、(三)の事実は否認する。」

と述べ、抗弁として、「仮に、被告らに損害賠償義務があるとしても、前記龍一には前記のような過失があるから、損害賠償額の算定につき斟酌さるべきである。」と述べた。

〔証拠関係略〕

理由

一、請求原因第一、第二項の事実は当事者間に争がない。

二、そこで、被告横路が前記事故につき責任を有するかどうかを考えてみる。

同被告が前記貨物自動車を運転して東進中、前記龍一の右側を追抜こうとしたこと、右龍一が道路の非舗装部分を自転車が進行していたこと、および前記事故を惹起したことは当事者間に争がない。そして、〔証拠略〕を総合すると、「右事故現場附近道路は、自動車の通行は頻繁であるが、数粁にわたり直線で、右事故当日は晴天であつたため、見通しは良好であつた。右道路の中央部分九米はコンクリートで舗装され平坦であり、中央線は白線で引かれていた。右舗装部分の両側三・五米は舗装されておらず、右事故当時非舗装部分は舗装部分より五、六糎低く、多少砂利も出ていた。右自動車は、長さ七・八八米、幅二・四九米、最大積載量六・五瓩の大型貨物自動車であつた。被告横路は、右舗装部分の左端から二〇糎位のところを、時速約四〇粁で進行中、約五〇米前方の非舗装部分の右寄りを、同一方向に向い自転車でゆつくり進行する前記龍一を認めたが、そのままの速度で直進した。ところが、右自動車が同人の後方四、五米のところまで接近したとき、突然同人の乗つていた自転車がふらついてハンドルを右に向けたため、被告横路は、あわてて衝突をさけようとしたが及ばず、自車左前部附近(左前照燈、左方向指示器、左バツクミラー等)を同人に衝突させ、同人を附近路上に転倒させた。」ことが認められ、被告横路本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は信用できないし、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右事実によれば、被告横路としては、先行する自転車がふらつく場合を予期して、右自転車の動静に注意し、且つハンドルを右に切つて十分な間隔をとり、安全を確かめた上で追抜くべき注意義務があるのに、同被告は、右の措置をとらないで、漫然同一速度のまま直進し、右龍一の至近距離を追抜こうとしたため右事故を惹起したものであり、右事故は、同被告の過失により発生したものというべきである。

そうすると、同被告は、不法行為者として、右事故によつて発生した損害を賠償すべき責任がある。

三、請求原因第四項の事実は当事者間に争がなく、被告河部は、自己のために右自動車を運行の用に供していたものであるから、右事故によつて発生した損害を賠償すべき義務がある。

四、そこで、被告会社が前記事故につき責任を有するかどうかを考えてみる。

被告会社が製材業を営むものであること、および前記自動車に自己の木材を積載して岡山県津山市から福岡県甘木市まで輸送することを被告河部に請負わせたことは当事者間に争がないけれども、被告会社が被告横路を雇用し、右自動車を所有するとの点に関する、〔証拠略〕は、次に述べるように採用できないし、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。すなわち、〔証拠略〕によれば、被告横路の防府警察署長に対する昭和四一年四月一九日付身上関係申述書には、同被告が被告会社の運転手であり、被告会社が右自動車の所有者である旨記載されており、同被告の同日付および同月二七日付司法警察員に対する各供述調書には、同被告の勤務先として被告会社名が記載されていることが認められるが、〔証拠略〕によれば、被告横路が前記四月一九日付の供述調書の第八項において、右自動車の所有者は被告河部であり、所有名義が被告会社となつている旨訂正して陳述していること、被告河部の同日付司法巡査に対する供述調書には、同被告が右自動車を所有し、被告横路を雇用している旨供述していること、およびその後右被告両名が一貫して右と同趣旨の供述を繰返していることが認められ、これらの事実に被告会社代表者尋問の結果を合わせ考えると、前記甲第一六号証、第一七号証の一、二および第二三号証が事実を正確に記載したものとは認め難い。しかしながら、〔証拠略〕を総合すると、「被告河部は、終戦後間もないころ、被告会社の材木を運送する目的で貨物自動車を買い求め、自動車運送業をはじめたが、右営業につき所轄官庁の免許を受けないまま前記事故当時まで営業を続けていた。同被告は、右営業を開始するにあたり、自動車の買受資金がなかつたので、被告会社に手形を振出して貰い、同会社名義で買受け、同会社名義に登録した。その後同被告は、度々自動車を買い替えたが、その都度右と同様に被告会社の手形で買い受け、これを同会社名義に登録し、引続き同会社の製品等の輸送に従事してきた。前記貨物自動車も右と同様の過程で買い求められ、被告会社名に登録され、自動車損害賠償責任保険も同会社が契約者となり、その車体には同会社名が記載され、専ら被告会社の製品等の輸送に使用されていた(被告横路が前記のように、事件発生当初警察で勤務先が同会社であり、右自動車の所有者も同会社であると述べ、また被告河部が前記供述調書で、同被告が自己の自動車を持つて同会社に勤めている旨述べたのは、右の関係を示すものと解する)。同会社は、右事故当時小型トラツク二台を所有していたが、前記貨物自動車以外には大型貨物自動車を所有せず、自己の製品の長距離輸送は、専ら被告河部をして右自動車により行わせていたものであり、右事故も同会社の製品を福岡県甘木市まで輸送した帰途に発生した。」ことが認められ、被告会社代表者尋問の結果および被告河部、同横路各本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は信用できないし、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右事実によれば、被告会社が前記自動車を所有し、被告横路を雇用するものとは認められないけれども、同会社は、被告河部に対し、自己が右自動車の保有者であることを外部に対し表示することを許したものであり、実質的にも、同被告に右自動車を運行させることにより、自家用車をもつて自己の製品を輸送するのと同様の経済的利益を得ていたものであり、同被告の運送営業を支配していたものと認めることができる。

そうすると、被告会社は、右自動車を自己のため運行の用に供していたものというべきであり、右事故によつて発生した損害を賠償すべき責任がある。

五、そこで、原告らの損害について考えてみる。

(一)  請求原因第六項の(一)の事実は当事者間に争がないから、前記事故によつて、原告弥恵子が合計金七万〇五七二円の損害を蒙つたことは明らかである。

(二)  〔証拠略〕に厚生省発表の第一〇回生命表および弁論の全趣旨を総合すると、前記龍一は、右事故当時満五五才(明治四四年四月一三日生)、極めて健康で、死亡当時山口県岩国渉外労務管理事務所に勤務し、ボイラー装置操作工として働いていたが、昭和四〇年四月から昭和四一年三月までの一年間に、手取額で合計金五七万九四五四円(平均月額金四万八二八七円)の給与の支給を受け、そのうち生活費として平均月額金二万円位を支出し、平均月額金二万五〇〇〇円以上の純収入を得ていたこと、および同人の余命はなお一八・五四年を下らず、同人の死亡当時の健康状態および職業からして、同人は、今後少くとも一〇年間は就労しえたものであり、右事故がなかつたならば、将来一〇年間にわたり平均月額金二万五〇〇〇円、合計金三〇〇万円の純収入を得ることができたものであることが認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。そうすると、同人は、右事故によつて金三〇〇万円の得べかりし利益を失つたことになり、これからホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除した金二三八万三四八四円がその現在額であり、これと同額の損害を蒙つたことは明らかである。

ところで、〔証拠略〕によれば、原告らは、右龍一の相続人としてその権利義務を承継したものであり、その相続分は原告弥恵子が三分の一、その余の原告らはいずれも九分の二であることが認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はないから、右損害賠償請求権のうち、原告弥恵子は金七九万四四九四円、その余の原告らは各金五二万九六六三円を承継取得したものである。

(三)  〔証拠略〕によれば、前記龍一は、温厚な性格をもち、昭和一九年九月二一日に原告弥恵子と婚姻して以来、二人の間に原告裕子(昭和二〇年七月五日生)、同恵美子(昭和二三年四月二二日生)、同和子(昭和二七年九月二七日生)をなし、平和な生活を営んでいたところ、不慮の事故によつて死亡したものであり、あとに残された原告らは一家の柱を失い、いずれも甚大な精神的苦痛を受けたことが認められる。そして、右精神的苦痛を慰藉するには、原告弥恵子については金四〇万円、その余の原告らについては各金二〇万円が相当であると認められる。

六、ところで、被告らは、損害額の算定につき前記龍一の過失を斟酌さるべきであると主張するのでこの点を判断するに、前記認定のように事故現場附近道路は中央部分はコンクリートで舗装されているが、その両側三・五米は非舗装のままであり、右非舗装部分は舗装部分より五、六糎低く、多少砂利も出ており、自動車の通行も頻繁な道路であるから、このような場所を自転車で通行する者は、危険の発生を防止するため、成る可く道路の左側を通行すべきであるのに、右龍一は、非舗装部分の右寄りを通行し、前記自動車が接近した際突然運転をあやまり、ハンドルを右に向けたため右自動車と衝突したものであつて、右事故の発生については、右龍一にも過失があるといわねばならない。

そして、右龍一の過失は公平の見地から損害額を定めるにあたり斟酌さるべきものであるが、右過失と前記被告横路の過失とは、右事故の発生につき前者が一、後者が四の原因力を有すると解するのが相当であり、これによると、原告弥恵子は前項(一)の財産的損害金、(二)の相続債権および(三)の慰藉料の合計金一二六万五〇六六円から五分の一を差引いた金一〇一万二〇五三円、その余の原告らは、前項(二)の相続債権および(三)の慰藉料の合計金七二万九六六三円から五分の一を差し引いた各金五八万三七三一円の損害を蒙つたことになる。

七、ところで、原告らは、自動車損害賠償責任保険金一〇一万三八一一円を受取り、これを相続分に応じて原告弥恵子につき金三三万七九三七円、その余の原告らにつき各金二二万五二九一円を右各損害額の一部に充当した旨自認するので、それぞれ右充当額を差引くと、原告弥恵子については金六七万四一一六円、その余の原告ら三名については各金三五万八四四〇円となる。

八、そうすると、被告ら三名は、各自原告弥恵子に対し金六七万四一一六円、その余の原告ら三名に対し各金三五万八四四〇円、および右各金員に対する訴状送達の日の後である昭和四二年三月一五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告らの被告らに対する本訴請求は、右の限度で正当であるから認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条本文、第九三条第一項、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大須賀欣一)

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